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その日から、二人は寄り添って過ごしました。
日課である朝の散歩から、夜に星を見に行く所まで、ずっと隣で過ごしました。
長年一人で生きてきたレウは、初めての出来事に感動ばかり覚えました。一人ぼっちで寂しかったクルも、久しぶりに誰かと過ごす時間を心地良く感じました。
たった二人だけの場所では、お互いが全てに思えました。
ですが、それが永遠に続かない事に、クルもレウも気付いていました。それも、はっきりとです。
クルは、病で先が短い事を話しませんでした。
レウも、いつ追っ手が来るか不安な事を話しませんでした。
ですが、お互いに何と無く事情は把握していて、その上で話す事も、詮索する事も止めていました。時には見ない振りさえしました。
深く知っても、仕方がないと思っていたのかもしれません。この先、何が起こっても今の自分達に出来る事はない。そう悟っていたのかもしれません。
それならば、唯々小さな幸せを積み重ねよう。相手の為に生きよう――そう、お互い密かに決めていました。
クルの服は、日を重ねるごとに赤で染まっていきます。その服をレウが見詰める度、クルは「レウは、まるで天使の様に綺麗だね」と告げました。
それは、心からの声でした。
その度にレウは「クルになら飼われてもいいわ」と笑うのでした。
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