はじめての幸せ

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「レウ、起きられる?」  ある日の夜中、優しく揺り動かされてレウは目覚めました。クルの足音をすっかり記憶してしまった為、もう怖くはありません。 「……どうしたの?」 「一緒に星を見に行きたいと思って。雨続きで見られなかったから」  いつもより、控えめな声が耳に響きます。暗がりの中でしたが、柔らかな笑顔まで見えた気がしました。 「上がったのね」  実はここ数日、雨続きで星を見に行けていませんでした。雨の日も楽しくはありましたが、日課が欠ける寂しさと言う物もありました。  負の感情の中に、温かさも見たのは初めてでした。 「うん、だから行こうよ。綺麗な星が出てるよ」 「嬉しい。私も見たいと思ってたの」  横に立つと、クルは緩やかに一歩踏み出します。  その手に触れようと思いましたが、止めました。  差し出してきては引っ込める――共に過ごしている中で、レウは何度もその行動を見ました。  一度だけ「こんな汚い手に触らせたくないんだ」と言われたこともあります。  その時やっと、行動の意味を理解しました。  もちろん、レウは気にしたことなどありませんでした。綺麗に洗われていますし、そんなことより触れたいと思う気持ちの方が強くあったのです。  寧ろ、血が付いていても構わないとさえ思うようにもなりました。  けれど、クルが望むなら。そう思い、レウは小さな我慢をするのでした。
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