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「、冬吾さん」
「圭介…ここで飲んでたんだ」
席についたとき近くで騒いでいた集団は圭介達だったらしい。
同じ店で飲んでるとは思わなくて互いにぽかんと見つめあう中、下を向いてフラフラしていた青年がガバッと顔を上げた。
眉根を寄せじーっと冬吾を見たかと思うと、肩を支えていた友人から離れ冬吾の元へと近づいてきた。
行動が読めずに困惑気なまま立っていた冬吾の肩をガシリと掴む。
「っえ――」
「トーゴさん!あんたトーゴさんでしょ!?」
「そ、そうだけど、」
「やっぱり!話で聞いてたよりイケメンっ!そして誠実そう!いやー良かった、貴方が圭介の相手でホンット良かった!」
力任せに両肩を叩かれ、冬吾の顔が痛みに歪んだ。
ぎょっとした圭介が青年を引き離そうとするが、何故か青年の手はがっちりと冬吾の肩を掴んで離さない。
「敬太、いい加減離せって」
「マジ圭介を頼みますよトーゴさん。こいつ前の恋人でホント苦労してて俺らもー見てらんなくて…て、あれ、知ってますよね?こいつの元彼」
「敬太っ」
「あ、あぁ…ここでバイトしてる彼だろ?」
「そうそうそれそれ!あいつホントだらしなくて、俺ら何回も別れろって言ってたんですよー。散々苦しんでたから、トーゴさんみたいな人が新しい恋人で安心したっつーか…いや、本当に、圭介のこと幸せにしてくださいっ」
「はいはいそこまでー、引かれてるからお前。すいませんホント酔っ払いで」
別の友人も加勢し漸く冬吾から引っぺがされた敬太と呼ばれた青年は、両腕を抱えられながらもぶつぶつ何か呟いていたかと思うと、また突然片手を上に突き上げた。
「よーっし、カラオケ行くぞカラオケー!気分良いから歌うぞーっ!」
「だからボリューム落とせっての。っつか孝也待つんじゃねぇの?もう上がりだろあいつ」
「場所伝えときゃ来るだろ。とりあえずこの近所迷惑を部屋に押し込めようぜ」
「じゃな圭介、また来週ー。トーゴさんも、突然すいませんでした」
「悪い。敬太頼むー」
敬太を引き摺るようにして去っていく友人を圭介が手を振って見送る。
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