第二章

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テーブルに置いていたスマホがメール着信を告げる。 洗い物の手を止めて内容を確認し、予想通りの送り相手にクスリと笑みがこぼれた。 ------------------------ From 九条冬吾 Sub コーヒーが恋しい… やっと今日帰れるー(´Д`) ビジネスホテル飽きた… こんなに家のベッドが恋しくなるなんて思わなかったよ… ------------------------ どんな顔して打ってるんだろう。 今の時間って絶対仕事してると思うんだけど。 2週間前から出張で支社に行っている冬吾さんとは、ほぼ毎日メールのやりとりをしている。 現地の人に連れて行ってもらったご飯が美味しかったとか、ホテルのベッドが柔らか過ぎて眠れないとか。 講義中の友人とのやりとりをメールしたら、『会議中に吹き出したよどうしてくれるの』って怒られた。 いやいやいや、会議中に何メール見てんのって話ですよ。 冬吾さんと話していると社会人ってこんなに自由なのかと勘違いしそうになる。 楽しいから良いんだけどね。 ------------------------ From 沢浪圭介 Sub お疲れ様です 出張お疲れ様でした。 気をつけて帰って来てくださいね。 そしてベッドでゆっくり寝てください(笑) コーヒーもまた飲みに来てください^^ ------------------------ そういえば、ホットサンドの新作が出来たんだった。 冬吾さん好きそうな味だったからお勧めしてみよう。 コーヒーも確かマスターが新しい豆仕入れてたなぁなんて、鼻歌交じりに食器洗いを再開しようとしたところでまたメール。 ------------------------ From 九条冬吾 Sub Re:お疲れ様です コーヒーもだけど、圭介に会いに行くよ ------------------------ 「っ―――反則だろ、」 一瞬で頬が熱くなるのが分かった。 こんなこと書かれたら、嫌でもあの日を思い出してしまう。 衝撃発言と目尻へキスをされてしまった。 次の日からのメールはいつも通りの調子だったけど「圭介君」が「圭介」に、俺も「九条さん」から「冬吾さん」に変わって。 何気ないメールや電話の中に、赤面するような言葉が増えた。
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