第二章

3/18
951人が本棚に入れています
本棚に追加
/94ページ
「…あれって、やっぱりそういうことなのかな……」 男の目をしていた。 あんな熱い声で名前を呼ばれて、勘違いだとはとても思えない。 まさか、俺みたいな単なる学生が冬吾さんの恋愛対象になるなんて思いもしなかった。 マメに連絡くれるのも、色々なお店連れてってくれるのも、弟とかを可愛がるのと同じようなものだと思っていたのに。 だから本当は…こうやってメールしてんのって良くないんだよな、きっと。 「………」 ------------------------ From 沢浪圭介 Sub Re:お疲れ様です じゃあ美味しいやつ淹れて待ってます^^ ------------------------ 分かってるけど、冬吾さんがメールをくれるのが嬉しくて無視なんてできない。 あの日以来、別段変わったことがあったわけじゃないし、あの時は俺を慰めようとしてくれてたのかもしれない。 っていうか、普通だったらあんな話聞かされて迷惑だよなぁ。 なのに大丈夫だと言ってくれて、次の日からも普通に連絡くれて。 それで好意を持たれてるかもって疑念で一方的に連絡を絶つなんて、いくらなんでも失礼だ。 しかも翌日ならまだしも日にちが経った今更とか、勝手すぎるだろう。 「はよー…って、電話してた?」 「っ」 着信を告げるスマホを弄ろうとして、寝室のドアが開く音に大袈裟に肩を揺らしてしまった。 頭を掻きながら孝也が近づいてくる。 「おはよ、ただのDM。コーヒー飲む?」 「飲む」 不自然にならないようスマホを裏にして棚に置く。 後ろから抱き着いてくる孝也をそのままに、コーヒーと用意していた朝食を皿へと並べた。 「これからバイトだっけ。今日と明日は早番だよな」 「そー…圭介は?講義なかったよな」 「うん。バイトも入ってないし、レポート片付けてる」 「俺も圭介と休みてー」 珍しいくらい甘えてくる。 隣に座ってぺったりとくっついてくる孝也に、そういえば最近あの子がしつこいんだとげんなりしていたのを思い出した。 孝也がこうなるって相当なんだろうな。
/94ページ

最初のコメントを投稿しよう!