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確かに、過去付き合っていた恋人達には知られたくないネジの緩みっぷりだ。
案外酒が回っているなと怠けかけた理性を叱咤して、冬吾は圭介の頭を撫で笑顔を返した。
「冬吾さん、酔ってます?」
「それなりにね、どうしたの?」
「まだ大丈夫そうならマスターのお店、行きませんか?」
「喫茶店?」
「はい。あそこ夜はバーになってるんですよ」
そういえば、そんな話を聞いていたかもしれない。
夜はほとんど素通りするだけなので、店の雰囲気すらよく知らなかった。
「以前、開店準備の手伝いしたときに飲ませてもらって。すごく美味しかったんです、マスターが作るカクテル。確か今週は金曜までやってるはずですよ」
「そういえばマスター、向こうでバーテンダーの修行もしてたんだっけ。それは是非飲んでみたいな。ここから近いし、行こうか」
「はいっ」
昼はすっかり馴染みとなっているあの店は、ここから数本先の路地にある。
いつもなら家でゆったり過ごす金曜の夜だけれども、たまには洒落た場所で2人の時間を過ごすのもいいかもしれない。
折角外で会えたのだから、長い夜を楽しまないと勿体無い。
視線を合わせて微笑み合い、2人は大通りへと歩き出した。
緩やかな、恋 ~~Fin~~
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