第1章 (1)

3/4
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
けれど、私の質問に黙ってしまい、考え込む彼を見て思い出す。 (げつ)はいつも里のみんなの為に一生懸命で、みんなが嫌がりそうな事や大変な事を率先してやる人。お腹を空かせた子供に遭ったら、自分も空腹でもその子供に食べ物をあげる。そういう人だ。 王様とは違う、正反対の無欲の塊。 そんな彼だから、本当は誰よりも幸せになれる願いを叶えてあげたいのに……。 「ね?何かない?」 「……いいんじゃない。今のままで」 「えっ?」 「戦で命を落としたり、身体に不自由がある人もたくさんいるだろ?そんな世の中で、五体満足で、毎日生きてる。 ……これ以上欲出したら、神様に怒られるよ」 そう言って、(げつ)は微笑った。 その笑顔にキュンッとしながらも、すぐにハッとして私は首を横に振る。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!