序章

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*** ーー赦せなかった!! けど。満月の夜じゃない日に、私の願いは届かないの。 今の私は、何の能力(ちから)も持たない役立たず。次の満月の夜が来ない限り、夢は叶わない。 見知らぬ国に連れて来られ、そして明日、強欲の塊のような王様と結婚しなくてはならない。祖国の誇りを捨て、民を裏切り、異国から来た偉人の力と知恵を借りてのし上がった男と……。 無力な自分。 悲しみと悔しさが混ざった涙が溢れ、「もう、どうする事も出来ないのだろうか?」と、思った瞬間(とき)ーー。 コンコンッ! 私が監禁されている部屋の窓を、誰かが叩いた。 「!っ……誰ッ?」 思わず心臓が跳ね上がり、身体が震える。 花嫁とは名ばかりで、王様は私をさらって来て以来、ずっと城壁内にある小さな小屋のような場所に閉じ込めていた。 おそらく私が自殺を図らないように、先の尖った物や紐はもちろん、生活用品もほとんどない。だから、ここには朝と昼と夜に食事や着替えを持って来てくれる使用人が来る。
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