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「お前ら何があったんだよ、俺ら何も聞いてないんだけど。」
ケイが出ていった部屋の中でため息をつきながら言うアツシ。そのアツシの言葉にタケルは頭を抱えて言った。
「俺にも分からんわ…アイツが何考えてんのか分からん…ケイが分かんねぇんだよ…」
タケルの言葉に静まりかえる室内。
「…俺、ケイを見てくる。」
そう言ってリョウは部屋を出ていった。
―――さんざん探し回ったあげく、リョウが行き着いたのは屋上。柔らかな暖かい風が吹いている。当たりを見回すと、フェンスを掴んで遠くを見ているケイがいた。リョウはゆっくりとケイに近づき、声をかけた。
「ケーイ。」
「………」
「何が見えんの?」
「……何も見えない…」
ケイはただ遠くを見て言うだけだった。少しずれ落ちているケイの長袖。包帯の巻かれていない所にも新しい切り傷がたくさんあった。指先にも。
リョウはそんなケイの側へ寄ると肩に手を回し、優しく聞いた。
「タケルと何かあったか?」
「………」
何も答えないケイ。リョウは一呼吸置くとフェンスにもたれ、タバコに火を付けて煙を吐き出した。
「1年くらい前にもこんな事あったよな。あの時も俺がお前なぐさめてさ。やっぱお前は変わってないなぁ。」
その時、ケイが小さな声で言った。
「……俺、変わっちゃったよ。」
「なんで?」
聞き返すリョウ。
ケイは涙の揺れる目でリョウを見つめ、微笑んだ。その微笑みがリョウにはとても悲しく映った。
「……俺…おかしいって自分でも思うんや。…タケルを自分のものだけにしたいって…ずっとそう思ってる…だから苦しいんや…タケルが他の人と一緒にいるっていうことが。どうしようもなくなる…。ねぇリョウちゃん…俺、おかしい…?」
「………」
「俺……もうラクになりたいな…このままここから飛び降りて死んじゃおうかな…」
「…っ!!」
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