【第17話】『異変』

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「ケイ、タケルに変な独占欲もってるみたいよ。今日屋上で泣きながら言ってた。『タケルを自分のものだけにしたい』って。」 「へっ…なにそれ…?仲いいのは知ってたけど…そんな事になってたん?で、でもほら二人は男同士だし…」 「は?違うよバカ。なんでそっち行くの。」 「え、だ、だって…」 「そういう意味じゃないって。恋愛感情の独占欲じゃないよ、ケイのは。男女の恋愛みたいな、そんな簡単なモンじゃないと思うんだよね。」 「どういうこと?」  リョウはタバコを1本くわえると火をつけながら言った。 「恐怖感じてるんだろうな、また一人になるっていう事に。小さい頃に我慢してた両親への愛情の欲求だとか、苦しさから救ってもらえなかった寂しさとかが爆発してるんだよ。今、タケルに対して。よっぽどタケルが心の支えになってたんだろうな。だから、他の誰かじゃどうしようもできない。タケルじゃないとアイツをラクにしてやれないんだよ。」 「……じゃあタケルが」 「でも…」 「…なに?」 「このままじゃタケルの方が潰れちまうよ。普通の友達関係じゃ考えられないような愛情の欲求をされ続けて、それに答えつづけて。でも所詮他人だから答えられるのにも限界ってのはあるじゃん。タケルにも彼女はいるし、ケイの知らない友達もいる。それにケイが気づく度、溝が深まっていく、ケイは苦しんでもっとタケルを求める。このままだとタケル、いつかつぶれるよ。」 「…そ…んな…」  リョウの言葉はアツシの胸に深く突き刺さった。ケイも、タケルも、どちらも悪くない。このままじゃどうしようもないじゃないか。  あの時、自分が彼から逃げていなければ…彼を守っていたならば…今とは違う彼でいれたのだろうか…  アツシの胸によみがえってくる悔しさ。あの痛々しい記憶と共に…
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