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次の日、ケイとタケルは二人でラジオ出演だった。この仕事で今日の仕事は終わり。ケイはこの仕事が終わったらタケルに素直に今の気持ちを話そう、と決めていた。
「なんかお前今日目ぇ腫れてない?充血してるで。」
本番前、何も知らないタケルがケイに何気なく聞いてくる。
「あっ…え、そうかな?えっと…そ、そう。昨日さ、実は一人で飲んじゃって。寝てないんだよね。」
へへへと笑いながら頭をかいた。
ずっと泣いてたなんて言えやしない。そんな女々しい事。それに、タケルに心配をかけたくなかった。やっと好きな人と暮らせるようになったタケルに変な心配をかけたくなかったのだ。
「そうなん?ならええけど。あんま一人で飲んでると太るぞ。」
「はいっ、気を付けますっ!」
いつものように笑って見せた。無意識に笑顔を作っている自分がやけにむなしい。寂しい、一緒にいてほしい、帰ってきてほしい、ベッドで前みたいに話を聞いて欲しい。そう素直に言えたらどれほどラクだろうか。
でも、もう耐えられない。
絶対に、今日、言う。女みたいって笑われたって、呆れられたっていい。自分の気持ちをタケルに伝えたい。寂しいんだって事を伝えたい。
「…なぁ、タケル?」
「ん?」
「今からの仕事終わったらさ…ちょっと2人で話できんかな…?」
「何の話?」
「それは、また後で言うから…ダメ?」
タケルはタバコの煙を吐き出すとクスッと笑いながら言った。
「なに改まっちゃってんの。不安になるやん。」
「えへへ、ごめんね…」
不安で押しつぶされそうなのはこっちの方だ。数日間とは言え、離れていた時間は2人の間に大きな溝を作っているかのようにも思えた。
でも、きっと自分とタケルの間には特別な何かがあると信じていた。自分の思いは伝わると、信じていた。
――そして30分間の生放送が終わり、タケルとケイは二人で控え室に戻った。
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