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「あー疲れた。」
壁にもたれてだるそうにするタケル。いつものようにすぐタバコへと手を伸ばす。首にはサヤのあげてたネックレスが。
ケイはタケルの方を何度もチラチラと見た。いつ言おう、何て言おう、やっぱり言わない方がいいのか…。そんな事を考えていると、タケルはそんなケイに気づき笑いながら聞いた。
「なに?お前さっきからチラチラ俺の方見て。あ、なんか俺に話があるんやっけ。」
「あ…うん…」
「何があった?」
こっちを見ずに遠くを見るような目のままで聞いてくるタケル。
「……あ、あのな、タケル」
ケイは言おうと決心をした。が、その時。
ガチャッ
「お疲れさまですっ!!」
元気そうにショウが入って来てタケルに言った。
「あれ?なんか機嫌よさそうやな。」
「そうっすか?」
「何かいい事でもあったか。」
「いや、あの、これから飲みに行きませんか?明日の朝から入ってた雑誌の依頼、あっちの都合で延期になったんですよ。なので今日がチャンスかと思いましてっ!!」
もう少しで言えたのに…コイツが…
ケイの中で何かが音を立てて崩れていった。きっとそれは理性という名の自制心。グッと握りしめた拳が震える、そして全身へ。
「どうですか?明日夕方からは仕事入ってますけど…」
スケジュールの紙を見ながら言うショウ。
「そうやなぁ、たまにはお忍びで飲みに行くか。」
タバコの火を灰皿に押しつけながら言うタケル。
「ケイさんも一緒に行きましょうよ!」
ショウが可愛らしい笑顔でケイに声をかけた。
…だがその瞬間、ケイは今までに見せたことの無いような見幕でショウを怒鳴りつけた。
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