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「……あ……ぁ……」
『あなたなんかにこの子を任せられない!!』
『お前にこいつを養うだけの金があんのか?あ?』
『あなたにケイを預けたら…この子死んでしまう!!』
『偉そうな口叩いてんじゃねぇよ』
『いやぁっ…うっ……』
「……かぁさんを……なぐらないで…」
『離婚して、ガキを引き取って、慰謝料請求して。被害者ぶるつもりなんだろうが、えぇ?お前の思い通りにはさせねぇからな』
「…おかぁさ……」
『誰があんたを情で養ってやってるか分かってるわけ?』
『これはしつけだから。どうしようもないあんたのために、わざわざ手を上げてやってんだよ。』
『あんた見てると気が狂いそうになるわ!!消えてよ!!』
「……ごめ…なさぃ……」
蘇る映像。ストロボのように、フラッシュのように断片的に。
身体が震え出す。目にあふれ出した涙が頬を伝い、ケイの心臓は激しく音を鳴らした。
ドクッドクッドクッドクッ
『痛い?こんなもんじゃすましたげないよ。』
『こういうの、虐待って言うらしいけど…お前が悪いから、これは拷問だ。』
『あぁ?まだ生きてたの?』
『母さんね、お前がいたら吐きそうだって。死んで欲しいって言ってたよ。さぁ、こっち来いよ。母さんの頼みだからさ…』
『来いよ!!』
「ぃ…いやだぁ!!もうやめてよぉ!!」
ダンッ!! ガシャンガシャンッ!!
「うあぁぁーーっ!!」
食器棚にぶつかった勢いで、棚の中の食器が落ちてきて次々に割れた。床に散らばる陶器の破片。
ケイはしゃがみ込み、思いっきり髪の毛を掴んだ。ブチブチとその長い髪が切れていく。
「いや…いや…いや…いや…いや…いや…いやだ…」
その間にも流れ続ける過去の記憶。ケイの自我は完全に崩壊していた。
「いやぁー!!助けて!!来ないでぇ!!」
ケイは叫び続けた。自分の意識がとぎれるまで。
苦しい、苦しい…けどもうタケルはいない。助けてくれない。
…また、ひとりぼっちになった。暗い暗い、闇の中へ……
【第16話-END-】
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