【第16話】『感情』

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「……あ……ぁ……」  『あなたなんかにこの子を任せられない!!』  『お前にこいつを養うだけの金があんのか?あ?』  『あなたにケイを預けたら…この子死んでしまう!!』  『偉そうな口叩いてんじゃねぇよ』  『いやぁっ…うっ……』 「……かぁさんを……なぐらないで…」  『離婚して、ガキを引き取って、慰謝料請求して。被害者ぶるつもりなんだろうが、えぇ?お前の思い通りにはさせねぇからな』 「…おかぁさ……」  『誰があんたを情で養ってやってるか分かってるわけ?』  『これはしつけだから。どうしようもないあんたのために、わざわざ手を上げてやってんだよ。』  『あんた見てると気が狂いそうになるわ!!消えてよ!!』 「……ごめ…なさぃ……」  蘇る映像。ストロボのように、フラッシュのように断片的に。  身体が震え出す。目にあふれ出した涙が頬を伝い、ケイの心臓は激しく音を鳴らした。  ドクッドクッドクッドクッ  『痛い?こんなもんじゃすましたげないよ。』   『こういうの、虐待って言うらしいけど…お前が悪いから、これは拷問だ。』  『あぁ?まだ生きてたの?』  『母さんね、お前がいたら吐きそうだって。死んで欲しいって言ってたよ。さぁ、こっち来いよ。母さんの頼みだからさ…』  『来いよ!!』 「ぃ…いやだぁ!!もうやめてよぉ!!」    ダンッ!! ガシャンガシャンッ!! 「うあぁぁーーっ!!」  食器棚にぶつかった勢いで、棚の中の食器が落ちてきて次々に割れた。床に散らばる陶器の破片。  ケイはしゃがみ込み、思いっきり髪の毛を掴んだ。ブチブチとその長い髪が切れていく。 「いや…いや…いや…いや…いや…いや…いやだ…」  その間にも流れ続ける過去の記憶。ケイの自我は完全に崩壊していた。 「いやぁー!!助けて!!来ないでぇ!!」  ケイは叫び続けた。自分の意識がとぎれるまで。  苦しい、苦しい…けどもうタケルはいない。助けてくれない。 …また、ひとりぼっちになった。暗い暗い、闇の中へ…… 【第16話-END-】
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