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次の日は新曲のレコーディングだった。スタジオの中でドラム撮りをしているリョウ。アツシはプロデューサーやエンジニアと入念に話し合いをしている。
ケイとタケルは同じソファーに座っているが、会話はない。目を合わせる事もない。いつもじゃれ合っているはずの2人の様子がおかしい事に、気づかない人なんていなかった。もちろんショウもそのうちの一人。
足を組みながらチャカチャカと適当にギターを弾くタケル。ケイはジッと楽譜に目を落としていた。
正直な所、タケルはケイに何を話せばいいのか分からなかった。ただ、いつものように彼の方から話しかけてきてくれるのを待っていた。だがケイが自分に話しかけてくる様子もない。
『タケルのせいやんかぁ…!!なんで分かってくれんの……』
『…嘘つき…』
昨日のケイの言葉がまだ、胸に突き刺さっている。掴んだ腕の感触も、突き飛ばした時の音も…瞳も…。後悔や苛立ちが渦巻き、ワケが分からなくなっていた。
ここまでもワケが分からなくなっている原因はただ一つ。ケイが自分に何を望んでいるのか分からなかったから。自分が彼にどんな嘘をついたのか分からなかったから。
その時、ケイの手に包帯が巻いてあるのに気づいた。しかも片手だけではなく、両手に巻いてある。巻き方からして、自分で巻いたのだろう。
なんでこいつ包帯してるんやろ…
気になったタケルはとまどいながらも聞いてみた。
「…ケイ、その手どうしたんや?」
「………」
ケイからはなんの返答もない。
「怪我したんか?」
「………」
「何があった?」
「………」
「おい」
「………」
「なんか言えよ」
「……タケルには関係ないじゃん」
「…なんやねんその態度。」
「タケルこそ何なん。人を見下したような言い方して。ガキ扱いするのもエエ加減にしてや。」
ガッ!!
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