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微笑んだ眼から涙がこぼれ落ちる。
「でも、愛している。永遠に」
天には星が輝いている。
永遠に見える星々にも、終焉がある。
その時にようやく僕たちは一つになれる。
この宇宙の片隅で。
生きているうちには叶わなくても――
「僕も愛している。君だけを――さやか」
彼女は再び微笑むと左の指から金色の輪を抜いた。
そして、そのまま虚空に投げ捨てた。
走り去る足音を聞きながら、僕はただ、天を見上げた。
冬の空に、星々は、宝石のようにきらめき続けていた。
見上げるこの宇宙のどこかで、今も終焉を迎える星があるのかもしれない。
ふと。
そう思いながら。
白く息を吐き、天を見つめる。
手にしていた星の欠片を、投げようとして手の平に握りしめる。
『妻』と――
たった一人愛した人を、呼ぶことの出来なかった想いが、胸の中で癒しがたい熱を放ち、渦巻く。
その痛みと、別れてなお消えない愛しさを抱きしめながら。
僕は一人、佇み続けていた。
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