さようなら、いとしいひと

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 連れて行かれた民間の研究施設で、頬の内側の粘膜を採取して、そこで彼と別れた。  結果の出るのは、二週間後。  十四日間を、僕は不安定なまま過ごした。  気のせいだ、とも思った。  世界にはそっくりな人が三人はいる。  顔のパーツなどたかが知れている。  確率の問題だ。  自分に何度も言い聞かせた。  結婚に向けて前向きに動き出した時期だった。  さやかと結婚式のことで相談しながらも、心が漂い出す。  鑑定結果が出るまで、僕はさやかに触れることが出来なかった。  星の欠片、という言葉に、さやかが静かに微笑んだ。  怒りを解いて、いつもの彼女の表情になっていた。 「そしたら、卓也くんとわたしは、星の欠片で愛を誓っていたのね」  優しく呟く。  愛しげに。  切なげに。 「そうだね。宇宙の片隅で命を終えた星々の欠片が、この指輪になっていたんだよ」  くすっとさやかが笑う。 「ロマンチックね――宇宙だなんて。卓也くんらしいわ」  二週間後。  未開封のままの鑑定結果を手に、さやかの父親は、僕の元を再び訪れた。  彼を当時住んでいた部屋に招き、二人で開封した。  結果は――  DNAの合致率は、98.9パーセント。  明確な親子関係が認められる。  僕は、さやかの父親の遺伝子をこの身の半分に受けていた。     
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