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「でも坂木雪子って中学の途中から急にいなくなったような」
「確か引っ越しをしたんじゃなかったっけ。親の仕事の都合で東京に」
「そうだったの」
寛太は中学以降クラスが別になったあたりから少しずつ疎遠になり、その後の雪子の消息は詳しく知らなかった。
「今頃、美人になっているんだろうな。どこかで会ってみたいな」
「ふふ」
「何がおかしいんだ。裕太。急に笑い出して気持ち悪い奴だ」
急に裕太は調子よく手を挙げる。
「よく聞けよ。実は俺、最近坂木雪子に会いました。東京で」
寛太と平太は前のめりになる。
「まじか」
「すげーじゃん」
寛太も平太も目を大きくあけて裕太を見つめる。
「この前、東京に出張に行った時に丁度、駅に改札ですれ違ったんだよね」
「どうだったの。綺麗だったの」
「そりゃもう、綺麗だったよ。黒髪のポニーテールで背もスラっとしていた。目は昔の面影があったな。スーツを着ていて仕事の途中だったらしくちょっと会話したら直ぐに行ってしまったよ」
「連絡先は交換したのか」
「一応ね」
「すげーじゃん。やったね」
寛太は目は見開いたままだ。
「雪子は東京で何をしているのかな」
「さあ、聞いたら出版社で働いているって言っていたよ。OLなのかな」
「なるほど」
「その後、メールで何度かやりとりをしたんだけど、今度新潟に帰ってくるらしい。なんでも新潟で夢を叶えることがあるんだって」
「え、そうなの」
平太は寛太を見る。
「どうした。寛太は雪子の話題になると真剣な顔をしているな。おまえもしかして
雪子のことが好きだったとかか」
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