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おれは来店したスーツの男性に笑顔で挨拶をする。
そして席へ案内しようとすると静止された。
不思議に思って男性の顔を見る。
男性は澄ました顔でこう言った。
「すみません。御子柴歩夢さんはあなたですか?」
「はい、そうですが……」
「実はあなたにお話があるのです」
なぜ俺の名前を知っているのかと思ったが、その言葉を聞いて合点がいった。
どこかでおれの噂を聞きつけたんだろう。
そしておれに相談しにきた、と。
実はこういうお客さんは珍しくない。
おれの名前はカフェのホームページに載っているし、ここに訪れるお客さんがおれの話をしていてもおかしくはない。
「それでしたら奥の席でお聞きしましょう」
「いえ、ここではない場所でお話したいのです」
どうやら人にはあまり話せないような内容らしい。
でもおれ勤務中だしなぁ。
おれがどうしようかと困っていると一部始終を見ていた店長が近づいて来た。
「行っていいよ」
「いいんですか、店長?」
「あぁ、今日は後急いでやるものもないしあとの事は俺達に任せて」
店長はウインクしてみせた。
店長の許可がおりたのでお言葉に甘えて早めに上がらせてもらうことにした。
「ということで、ただ今身支度して参りますね」
おれは男性にそう声をかける。
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