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最悪な再会
「歩夢、本当にありがとうな。妹も喜ぶよ」
そう言って笑顔で指輪のついたネックレスを受け取ったのはおれの友人であり、バイト仲間の坂崎直哉だ。
「いいってことよ」
そのネックレスは直哉の妹が恋人から貰った大切な物。
それを不良に盗られたと聞いて、おれは取り返すために昨日不良の元へ向かったのだ。
そのせいで色々とヤバい目にあったけど、無事取り戻せたので良しとする。
思い出すだけで恥ずかしいやら腹立つやら、とても複雑な気持ちになる。
うん、あれはただの事故だ。
記憶から抹消しよう。
どうせもう会うこともあそこへ行くこともない。
というか行きたくない。
「不良のヤツら大分ヤバそうなやつだったけど、歩夢お前何かされてないか?怪我とかない?」
「なんもなかったよ。おれは無傷!なんたっておれにはピンチを逃れる術があるからな」
直哉はおれが特殊能力を持っていることを知っている。
それでも常に身を案じてくれる優しい奴だ。
何も無かったと言えば嘘になるけど、昨日のことはさすがに言えない。
だって言えるわけないだろ、いかにもヤバそうなやつに痴漢されました、なんて。
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