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辺りは、白に染められていた。
おしろいをした木々が、たいそう寒そうに凍えている。
僕と彼女も堪らず凍える。たくさんの木に囲まれて。
悴んで赤くなった彼女の顔は、僕の太陽だった。
なんて美しいのだろう、白の中に1つ、真っ赤な太陽。
彼女は優しく目を瞑る。
堪らず僕は、彼女の身体を包む。
幸福が僕を包む。
彼女もこれに応えて、僕に微笑む、目を瞑ったまま。
重厚な衣服でも隠せない、真っ赤な肌が触れ合う。
幸福のあまり、僕も目を瞑る。
雪が僕と彼女を別世界へと誘う。
雪と幸福に包まれて、僕と彼女は別世界へと向かう。
目を開ける。雪が舞っている。
彼女はまだ、幸福に包まれている。
風は止み、辺りは静寂に支配されている。
太陽が僕と彼女を照らしている。
まだ赤みを帯びている彼女の顔は、太陽の光に抱擁されていっそう、美しい。
顔の至る所についた雪の子供達が、楽しそうに輝いている。
彼女も輝く。優しく、幸せそうに。
神聖なその姿、例えようもないほど。
彼女は幸福の世界の具現になった。
僕もそこへ行こう。
太陽が雪を照らし、僕の周りには見事な銀世界が広がっている。
太陽によって創造されたこの銀世は僕と彼女だけの幸福の世界を連想させる。
僕は太陽に向かって駈け出す。
若者は少し駈けたのちにその場で力尽き、そのまま二度と立ち上がることは無かった。
数日後、ある雪山で若い男女の亡骸が見つかった。
2人の顔は清々しく、幸福に満たされ、微笑みを浮かべているように見えた。
辺りに広がる銀世界は、その煌めきを失うことなく、静寂に包まれていた。
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