あたらしいまち

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「皆さん、嘘はダメですよ?」 古本屋は動じることなく、クスクスと笑う。 「嘘?何を言ってるんだ」 「そうよ、私達は本当に帰りたいの!」 「リタ、嘘つきじゃないもん!」 彼らは困惑しながらも、古本屋を非難する。 「本当にそうでしょうか?エドワード、あなたは妻と親友の不倫を、見て見ぬふりしていますね?ロザリー、あなたは女だからと、取引先に理不尽な扱いを受けていますね?リタ、あなたはご両親に八つ当たりされている日々を送っていますね?」 前の3人は、黙りこくってしまった。 古本屋は他の人達の不満も言い当て、次々と彼らを黙らせていく。 「で、でも!仕事をサボるわけには……」 「俺がいなくなったら、誰があいつらを養うんだ?」 「リ、リタがいなくなって、パパもママも寂しがってるよ!」 他にも、自分は街に戻るべきだと言う者達。 大勢の者がずっと怒りをぶつけているというのに、古本屋はまったく動じない。それどころか、優雅に拍手をしだした。 彼らは戸惑いながら、互いに顔を見合わせる。 「皆さん素晴らしい心意気ですね。……ですが、皆さんが自分を犠牲にして、得たものはなんですか?彼らは皆さんに、何をしてくれましたか?愛情、友情、金、名誉……。その他なんでも、見返りはありましたか?言われるがままに与えて、皆さんは何か与えてもらいましたか?」 古本屋の言葉に、誰もがうつむく。 「ないよ……。パパもママも、嘘ばっか……。今度一緒にお外で食べようね、皆でお出かけしよう、絵本買ってあげるねって、言ってくれたのに……。どこにも連れてってくれないし、なんにも買ってくれない!いつもリタのこと、ぶったり蹴ったりしてばっか!パパもママも大っ嫌い!」 最初に怒りをぶちまけたのは、リタという少女だ。
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