あたらしいまち

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「男性方、木材はまだ足りません。ひと休みしたらまたお願いしますよ。あなた達は、この種を畑に蒔いてください」 古本屋は男性達に優しく声をかけ、女性達に種がたくさん詰まった小さな袋を渡した。 男性達はそこら辺にドカッと座ると、徐々に組み立てられていく家を見る。 女性や子供達は、出来たばかりの畑に種を蒔く。 1時間もしないうちに、ひとつの建物が出来上がった。今集まった人達が全員入れそうなほど大きな建物だ。 「ここは、皆さんの集会所です。少々お待ちを」 古本屋はトランクケースを持って、建物の中に入った。鍵をかけて中央へ行くと、トランクケースを開けた。 中から様々な家具が出てきて、綺麗に配置される。小さな台所と、大きな憩いの場の完成だ。 古本屋は女子供と老人達を集会所に入れると、休ませた。茶葉とクッキーを女性達に渡して、お茶会を始めさせた。 男性達はふたつの家が完成すると、集会所で休むというのを繰り返した。 たった2日で、街が出来た。 手前に集会所、家がいくつかあり、奥には古本屋の家、更に最奥には祭壇がある。 新しい街の住人達は、古本屋に振り分けられ、見ず知らずの人と家族になった。はじめは不安だったが、彼らが本当の家族として過ごすのに、時間はかからなかった。 古本屋は誰が誰と過ごしたら上手くいくかを、知っていたからだ。 一家に小さな畑がひとつあり、古本屋の魔法で急成長したため、食糧難とは無縁の生活を送れている。この小さな街では、誰もが幸せに暮らしている。 「さて、そろそろいいかな……」 古本屋は鮮血のグラスを祭壇に置くと、原稿用紙を引っ張り出し、何かを書き始めた。
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