春一番

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それから暫くして大学進学を機に、 武流が私に『会いたい』と。 共通の友人経由で連絡が来て、 ウチの近所の公園で待ち合わせることに。 ベンチに並んで座った途端、 ペットボトルのミルクティーを渡された。 昔いつも飲んでいた銘柄を どうやら覚えていてくれたらしく、 彼はブラックの缶コーヒーを飲んでいて。 火傷しそうなほど熱い目で私を見詰め、 そしてこう言ったのだ。 あの頃は幼すぎて上手くいかなかったが、 今なら大丈夫だと思うと。 別れてからもずっと私のことを想い続け、 忘れることが出来なかったのだと。 「やっぱり俺は唯しかダメなんだ。 頼むからもう一度チャンスをくれないか」 その熱意に負けた私は 適当すぎた過去の恋愛を深く反省し、 『はい』と即答する。 いま考えると、これが間違いだった。 中学以来ロクに会っていなかった男と 再会していきなり付き合い出す。 わずか数年の間で外見が変わった様に、 その中身も変わってしまっていたのに。 そんなことにすら気付けなかったのだ。 聞くところに寄ると 男は恋を新規保存しか出来ず、 女は恋を上書き保存しか出来ないらしい。 つまり私の中で武流は 14歳のままで止まっていて、 その続きから始めようとしていたのに。 武流の中で私は既にリセット済みで、 新たな関係を築こうとしていたのである。
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