春一番

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昔から女にだらしなかった啓太くんは 離婚以降さすがに落ち着いたものの、 それでも定期的に彼女はいるらしく。 その彼女も自宅に連れ込むことは 無かったので、合鍵を貰っていた私は いつでも自由に出入りしていた。 啓太くんは私にとってのオアシスで。 愚痴も言えたし、 素の自分も見せられたし、 私が甘えることが出来る唯一の大人。 …そんな存在だったのだと思う。 異性として意識したことは無かったし、 むしろこんな男に騙される女は 頭が悪いとまで言っていたほどで。 もちろん武流のことは好きだったから、 彼の求める理想の彼女になろうと努力し、 再三の要求に従い、バイトだって辞めた。 なのに。 「唯、お前なに考えてるんだよッ。 あんなオッサンの家に通い続けて、 それで金でも貰ってんのか?! …マジでキモイんだけど」 付き合って3カ月が経過した頃、 武流が私の後をつけたらしく。 一方的にそう批難された挙句 啓太くんと会うことを禁じられ、 私の中で何かがキレた。 「キモくないよッ。 啓太くんと私はそんな関係じゃ無い! やだ、私は誰が何と言っても 絶対に啓太くんと会い続けるんだから。 だって、もし啓太くんに会わないと… 会えなくなったら、私は死んじゃうッ!」
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