春一番

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…そんな言い分が通用するワケも無く。 世間一般の常識で考えると、 彼氏がいながら他の男の元へ通う女は 責められて当然で。 しかもその相手が20も年上となると、 色々と邪推されても仕方なかったのだ。 愛情は容易く憎しみへと裏返り、 その熱量もイコールで結ばれるらしく。 武流は激しく私に怒りをぶつけ出す。 「ふざけんなよッ!このクソ女が。 皆んなにこのことをバラしてやるからな」 …その予告通りに彼は実行し、 翌日にはもう周囲に知れ渡っており。 どこから聞きつけたのか、 母からも忠告を受けることとなる。 「唯、今までは黙っておいてあげたけど、 やっぱりここが限界かもしれないね。 もう森嶋くんと会うのは止めなさい。 アナタは年頃の娘なんだから、この先、 素敵な男性と出会って結婚するだろうし。 ねえ、考えてみたことは有る? 森嶋くんが結婚出来ないのは、 唯のせいかもしれないよ。 せっかく新しい彼女が出来て 親密な関係になろうと思っても、 いつも自宅には唯が押し掛けていて。 彼は優しいから唯に『来るな』と言えず、 彼女との関係をぎこちなくさせて しまったのかもしれない。 唯、アナタが森嶋くんの足枷になって いつまでも1人にさせてしまったなら、 …もうここで彼を解放してあげないとね」
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