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「あ、あのー、何をするつもりなんでしょうか?」
恐る恐る声をかけると、「……お待たせしてすいません。手と足が許せないのでまず最初に切断してしまいます。残りは後日解体です」
とんでもないことを真顔で言われた。
わかりやすく教えてくれたのはいいけど、解体されるなんて絶対に嫌。
「あのー、いつもこんなことしてるんですか?」
しつこく話しかけたらキレられるかなと冷や冷やしつつも、この場を打開する突破口を見つけるために私は会話をする他に手はなかった。
「……実は恥ずかしながら、こういうことは初めてなもので。手際が悪くて、申し訳ありません……」
広げたシートの四隅が気になるのか、ズレないようにガムテープで止めながらそう答えてくれた。
さっきから男の息づかいがハアハアと荒くなってきているのは、興奮しているのではなく緊張しているからなのかもしれない。やたら汗もかいている。
付け入る隙がありそうな気がした。
「あなたは何か悩みがあって傷付いているんだよね? もしよかったら、話を聞かせてもらえませんか?」
大袈裟でわざとらしかったかもしれないけど、それっぽい雰囲気で優しい言葉を投げかけることで、男が心を許すかもしれないと私は勝負に出た。
これでダメなら諦めよう。
「……傷付いてなんかいませんよ。ただもう限界なんです」
なんだかよくわからないけど、私のかけた言葉が響いたらしく動かす手を止めて語りだしたので良しとする。
そして男は、身の上話を聞かせてくれた。それはとても壮絶なものだった。
劣悪な環境で育ち、度重なる不幸、そして人間関係にも恵まれなかったことで、性癖も歪んだものになってしまったのだろう。
確かに可哀想ではあるし、おかしくなるのも仕方ないかなと思ったけど、人を殺めるなんて許されることではない。
「……僕は、どうにもならないんです。毎日がとても苦しいんです……」
涙ぐんでいた。
今まで自分を語る機会なんか無くて、いろいろ溜め込んでつらかったんだろうなって、痛いほど伝わってきた。
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