予知夢

9/13
前へ
/16ページ
次へ
 ですが、まあ…結論から言ってしまえば、『予知夢』は現実になりました。  約一年後の私は、いつも通り自分の部屋でゲームをやっていて、その途中でふと、ああ…そういえばあの頃、自分は、今の自分の様子を『予知夢』で見ていたんだったな、ということを無感情に思い出しました。  そう、結局私の努力というものは、しょせん無駄だったというわけです。  ますますつまらない話になるので詳細は省きますが、小さないくつもの失敗と挫折があり、運やタイミングの悪さが重なって、私なりに努力したつもりではありますが、一年後の私は理想通りの生き方をすることができませんでした。  けれど、こうして部屋でダラダラとゲームをする私がいる最大の原因は、あれこれ言い訳をしたところで、自分の情熱の消失なのです。  これは私という人間が持つ欠点のうちの大きな一つなのですが、どれだけ必死に頑張って…それこそ寝食を忘れてあらゆるものを犠牲として努力していても、あるときフッと冷めてしまう、それまでの熱意をあっさりと諦め、無くしてしまうことがあり、今回もその悪いクセが出てしまったんですね。  張りつめていた糸が、ぷつりと切れたら、もう元には戻ることのないように。  未来を知ることなく、懸命に頑張っていた頃の自分には戻れない。  あのとき夢を諦めてしまったのは、いろいろとチャレンジした結果やっぱりこの仕事は自分に向いていないと悟ったからなのか、それとも、『予知夢』によって叶うことのない未来に抗い切れなくなった私の弱さからなのか…今となっては、よく分かりません。  ただ、それからは人生のいろんなことが、どうでもよくなってしまったところはあったんだと思います。  自分の人生のシナリオは、もう出来上がっていて、自分という存在では、書き換えることも書き足すことも不可能…ついにそう達観してしまったというか、受け入れてしまったというのか…。  とにかく私はこれまで通り、『予知夢』によって少し先の未来を確認してから、現在の自分のライフスタイルをコントロールするという、子供の頃から慣れ親しんだ生き方を、誰に話すこともなくひっそりと続けていきました。  なんてつまらない人生だろうと思いながら。  でも、自分では選択肢を生み出すことのできない、つまらない人生…それがずっと続いていくのかと思っていた矢先、私にとって大きな事件が起きるのです。  
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加