予知夢

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 なぜならその『予知夢』は、絶対に現実にはなりえない類いのものだったからです。  まず、その夢に出てきたバイト先の先輩ですが、なぜこの人が夢に出てきたりするんだろうと腹が立つくらいに、私は大嫌いだったのです。  ガミガミと口うるさい人で感じが悪く、夢を見た当時、私はこの人を避けていました。  できれば顔も見たくない、というくらいに。  ですからこの先輩と自分が、あんなにも親しげな様子で楽しそうに、仕事が終わったあと同じ時間を過ごすというのも考えられなかったし、そもそも私は仕事終わりはさっさと帰りたいタイプであり、もっと言うとこのバイトはしんどくて、いつ辞めようかとタイミングをさぐっている時期でした、あんな光景が現実になるとは到底思えない。  それに、あのムスッとした顔つきでサバサバした態度の先輩が、編み物をしている…というのもさっぱり意味がわかりませんでした。  ヤンキー系の風貌をしている先輩は、見るからに編み物なんてするタイプとは思えません。  しかも今の季節は春…どうして編み物などというイメージが出てきたのかも謎です。  見たときの感覚は『予知夢』のものだったけれど(うまく説明できませんが、ただの夢と予知夢では、手触りのようなものが違うのです)あれはただの夢だったんだな…と、そのときの私は結論付けたのです。  あるいは『予知夢』というものにも、当たり外れがあるのだろうと。  しかしまあ…結果から申し上げますと、やはりその夢は約一年後、現実となりました。  春先に始めたバイトもずるずると続けて冬が近づいてきた頃、びっくりすることに私は先輩と仲良くなっていました。  口うるさくて嫌な人だな…と思っていた先輩の性格も、指導時の言い方がちょっと不器用なだけで仕事熱心さから来るものだったんだと、必死で慣れない仕事に食らいついている内、若かった私でも自然と理解できるようになったからです。  それなりに自分一人で仕事をこなせるようになり、素直にその指導に耳を傾けられるようになった頃、先輩もかなり私に親しくしてくれるようになって、夢を見た当時では考えられないことですが、仕事終わりに二人で遊びに行くほどの仲までに変わったのです。  
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