5人が本棚に入れています
本棚に追加
そしてあるとき私は、先輩の運転する車でショッピングモールへ遊びに行った際、こんな会話をしたのです。
「最近寒くなってきましたね、そろそろマフラーでも買わなくちゃなぁ」
特に何も考えることなく、ひとりごとの延長のような口調でつぶやいた私の言葉を聞いた先輩は、同じくごく自然に、こう言いました。
「なんならマフラー編んであげようか? こう見えて編み物、得意だし好きなんだ。
毛糸玉を買ってくれたなら、好きな長さで編むよ」
このように声をかけられた私は喜び、そのままショッピングモールで青い毛糸玉を購入し、こんなカンジの幅と長さでこういうデザインにお願いしたいと希望を伝え、先輩に託しました。
そうして数日たった後の仕事終わり、先輩と二人でロッカー室で帰り支度をしていると、「そうそう、あのマフラー、ここまで出来たんだよ」と楽しげに言いながら先輩は、自分のロッカーから出してきた編みかけのマフラーを私に見せてくれました。
そこからは、仕事終わりの程よい疲れからくるダラダラとした雰囲気から、私たちは雑談を始め、ついつい床にそのまま座り込むと、午後ティーを片手にお菓子なんかをつまみながらまったりと、くつろいでしまいました、先輩なんてその場でおしゃべりをしながらマフラーの続きを編み出す始末です。
そんなふうに気楽に過ごしているとき、ハッと私はふいに思い出したのです。
このシーン…前に見たことがあった、と。
いわゆるデジャヴという感覚ですね、私の場合は『予知夢』ですが。
何事においてもそうですが、約一年前に見た夢のことなど、このときの私はすっかり忘れていました、一年前の夕飯のメニューなんていちいち心にとどめて置いたりしないですよね、それと同じことです。
ただいつも、まったく同じシーンが目の前で繰り返されたとき、ハッと思い出すのです。
そうだった、こういうふうになるんだったんだよな…なんて。
ですからこのときの、ハッと『予知夢』で見ていた光景だったんだと思い出す感覚もいつものことではあったのですが、ただ今回限りは、こうしていつまでも記憶に残っているくらい、別の気持ちが私の心に中に浮かんだのです。
その気持ちは…恐怖でした。
最初のコメントを投稿しよう!