予知夢

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 自分の見る『予知夢』が、かなり細かいところまで未来のワンシーンを指定していると知ってはいたものの、これではあまりにも『決定されすぎている』のではないかと、恐ろしくなったのです。  子供の頃からの習慣で私は、自分の見た『予知夢』の内容を知ってから、どうやらちょっと先の自分はこんな暮らしをしているらしいと予測をつけて、スケジュールを作ることが当たり前になっていました。  しかしそれにしてもこれじゃあ…あの『予知夢』は、私から見た先輩の座っている位置、手に持っている編みかけのマフラー、お菓子や飲み物の配置、しゃべっているときの雰囲気…すべてがぴったり現実とそのままで、…まるで作られたドラマが再生されているみたいだった。  もしかして人生、いや運命とは、決められているにしてもそれは大雑把なものではなく、アドリブすらも許されていない台本通りに流れていくものなのだろうか?  そのときの細密な『予知夢』をきっかけとして、私はそのような恐怖を持つようになりました。  もし個々人に与えられた人生が、すべて決まりきったものだとしたら、何のために人は生きているのだろう?  私たちはただ、何者かが作った台本に従うしかない演者にすぎないのだろうか?  …そんな疑問を持ちながらも、誰かに相談することもできず(一体誰が、この私の疑問に答えを与えてくれるというのでしょう?)ただ疑問は疑問として保留にしつつも私は、これまで通り、『予知夢』から少し未来の自分の状況を察して今を生きていく…という日々を過ごしていきました。  しかしついに私の人生において、ひとつの節目が訪れます。  当時の私に、目指すべき大きな夢ができたのです。  今している仕事を辞めて、もっと専門的な技術が必要とされる職業に転職しようと考えたのでした。  目標にむかって、私は一生懸命に勉強をしました。  そして勉強をしながら私はこう決心していたものです、一年後までには、技術を身につけ目指すべき職業へ立派に携わっているようにしようと。  目標にむかってワクワクしながら夢中に突き進んでいるときほど、楽しいことってなかなかないですよね。  そんなときに私は夢を見たのです、そう『予知夢』を。  
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