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意味を持たない夢たちとは異なる感覚…すぐに、これは『予知夢』であると理解できるそれは、いつものように数分程度のなんてことはない日常の風景を、眠っている私に見せたのです。
『予知夢』…おそらく一年後と思われる私の日常、まず視界に入ってきたのはテレビでした。
私の部屋にあるいつもの見慣れたテレビ、夢の中の私は、いつものようにテレビの前に座っており、ひとりでゲームをしています。
そのような、つかの間が『予知夢』として現れて、そして消えていきました。
それ自体は、まったくこれまで数多に見てきた『予知夢』のひとつでしかありません。
しかも内容としては、かなり地味な方です。
ただ自分の部屋でテレビゲームをやっていた、というだけなのですから。
ですが私は、目覚めてからもう一度先ほど見た『予知夢』を反芻したとき(『予知夢』だけは、目が覚めてもしっかりと覚えているのです)ゾッとするほどの恐怖を感じました。
今見た『予知夢』は、約一年後の未来なのだ…。
一年後の私は、自分の部屋でゲームをやっている? そんなバカな…。
そのときの私は、これまでの人生の方向性を変えようと努力して、必死に努力している最中です。
一年後の私は、今の仕事を辞め、新しい職業に就いて、充実しながらも必死になって働いているはずなのです。
とてもじゃありませんが、自分の部屋でのんびりとゲームなんてやっている時間などないのです。
それなのに『予知夢』の中の私は…。
気持ちのいい朝日に照らされつつも、血の気が引くような感覚を私は覚えました。
それでもここで初めて、強く決心したのです。
運命を変えてやろう、『予知夢』の未来予言を自分の意志で、外してやろう、…と。
これまで人間の一生とは、細かいところまで筋書きの決まった演劇であり、それを覆すことはできない、むしろ、そのとおりに安寧に過ごしていけばいいなどとぼんやり考えていた私がここで、ついに『予知夢』に逆らい、自分の意志で、未来を切り開いてみせようと決心したわけです。
人間が生きるということは、ほぼ無限に広がる選択肢の中から、悩みながらも自分の意志で選び抜いた道を、自分の足で進んでいく、そのことに意義があるんじゃないのか?
大人になりながらも、まだ若かった私はそのように考えて、奮起したのでした。
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