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ノンフィクション・ラブストーリー
――僕はその日、運命的な出会いをした。
◇
目覚まし時計が鳴った。
布団に潜ったまま、手探りで停止ボタンを叩く。
暖かい布団の中、もう一度夢に落ちかけたところでスヌーズで目覚ましが鳴り、今度は背面のスイッチを切り、きちんと解除した。
ベッドから起き上がり、テレビを付け、洗面所に移動する。
歯を磨き、顔を洗い、ひげを剃る。弄び甲斐のないへたれた髪は、水をつけ寝癖だけを直しておく。
身支度の合間合間に用意した、トースト、目玉焼き、コーヒー。
バターを塗ったトーストをかじり、時間の確認の為だけに付けているテレビに視線を移した。
ちょうど占いが始まったところだった。
完璧な半熟具合の目玉焼きに醤油を垂らし、一口頬張る。
このチャンネルの占いは、まず11位から2位まで発表していき、その後、12位、最後に1位を発表する。
これを見るたび、シンプルに12位から発表すればいいのに、と思う。
「今日の12位の星座は……」
僕は8月生まれの獅子座。まだ獅子座は出ていない。
来るな来るな来るな。
トーストの最後の一口を、コーヒーで流し込む。
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