ノンフィクション・ラブストーリー

13/17
前へ
/17ページ
次へ
美玲はぱらぱらとページをめくり、ある一部分を桜色に染まる指先でなぞった。 僕はその綺麗な桜色に導かれるまま、そこを読んだ。 【「わあ、綺麗……」 美玲は眼前に広がるイルミネーションに、目を輝かせた。正は、そんな美玲を微笑ましそうに見つめている。今日はクリスマスイブ。正はサプライズで美玲をここへ連れてきたのだ。 そして、正のスーツのポケットには、ベルベット素材の小さな箱が入っていた。律儀な正らしいきっちり給料三ヶ月分の美玲への愛の証】 「ね? ここは、絶対正さんの協力が必要でしょ? さすがに私が先導する訳にはいかないし」 美玲はころころと楽しそうに笑う。 僕はなんて言えばいいのかわからず、曖昧に頷く。そのくせ、口からはしっかり「ああ、そうだね」と、肯定の言葉が飛び出ていた。 心臓はぎゅっと縮こまりっぱなしだった。 鼓動はドクドクと強く打ち付けてくるし、寒くもないのに指は震えていた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

94人が本棚に入れています
本棚に追加