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美玲はぱらぱらとページをめくり、ある一部分を桜色に染まる指先でなぞった。
僕はその綺麗な桜色に導かれるまま、そこを読んだ。
【「わあ、綺麗……」
美玲は眼前に広がるイルミネーションに、目を輝かせた。正は、そんな美玲を微笑ましそうに見つめている。今日はクリスマスイブ。正はサプライズで美玲をここへ連れてきたのだ。
そして、正のスーツのポケットには、ベルベット素材の小さな箱が入っていた。律儀な正らしいきっちり給料三ヶ月分の美玲への愛の証】
「ね? ここは、絶対正さんの協力が必要でしょ? さすがに私が先導する訳にはいかないし」
美玲はころころと楽しそうに笑う。
僕はなんて言えばいいのかわからず、曖昧に頷く。そのくせ、口からはしっかり「ああ、そうだね」と、肯定の言葉が飛び出ていた。
心臓はぎゅっと縮こまりっぱなしだった。
鼓動はドクドクと強く打ち付けてくるし、寒くもないのに指は震えていた。
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