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「おい佐藤、おまえ美玲ちゃんのことちゃんと幸せにしないと、許さないからな?」
肩を組んできた同僚が言った型通りのそれに、僕は「うん、わかってるよ。ありがとう」と返した。
麗らかな春の昼下がり、真っ白で綺麗なチャペル。
色どり鮮やかなたくさんの花に囲まれてのガーデンウエディング。
受付には僕たちの似顔絵入りのウエルカムボードがあり、テーブルを彩る花の種類、色までも一緒だ。
「正さん」
友人達の所へ行っていた美玲が、戻ってきた。
純白のウエディングドレスに身を包む美玲は、本当に本当に綺麗だった。
裾が大きく広がったプリンセスライン。腰には後ろ姿を華やかに飾るオーガンジー素材の大きなリボンが結ばれ、柔らかな栗色の髪には鮮やかな生花が散りばめられている。
“本の中の美玲”と同じウエディングドレス姿。
彼女が選んでいたのが、このタイプのデザインで良かった。
もしあまりないような奇抜なデザインで、オーダーメイドしか無理だったら、僕はどこかで借金しなければいけないところだった。
「……ねぇ、正さん」
美玲が僕の手をそっと握った。
「ん?」
「私……私ね、ほんとに幸せ……。今まで生きてきた中で、今日が一番幸せだわ」
僕を大きな瞳で見つめ、美玲は言った。
綺麗な綺麗な涙が浮かんでいた。
僕はその台詞を何度も読んだ。
そして、このあとに僕が言うべき台詞も。
「ああ、僕も幸せだ。……美玲、愛してるよ」
美玲はどんな花よりも美しい笑顔を咲かせた。
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