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出会ったあの日から一ヶ月が過ぎた頃、僕たちは初めてデートをした。
昼過ぎに訪れた公園は、今はもう茜色に沈みはじめている。
三度目のランチの時、何気ない会話の途中、「ここ、行ってみたいんですよね」と言った彼女の言葉尻を必死で掴み、決死の思いで誘った海の見える公園での初デート。
緩やかに吹く風に髪を押さえ微笑む彼女は、まるで一枚の絵画のようだ。
いつまでもこの時間が続いて欲しい。出口までの道をわざとゆっくり歩きながらそう思う。
もっと一緒にいたい。そう告げることが出来る勇気は、一体どこから沸いてきてくれるのだろう。
「佐藤さん」
不意に彼女が僕を呼んだ。振り返ると彼女は立ち止まっていて、僕も立ち止まった。
「私、佐藤さんのことが、好きです」
彼女は僕を見つめ、そう言った。
それは、何度も夢にまで見た光景だったけれど、とても信じられなかった。まさかドッキリなんじゃないかとも思った。
だけど、僕を真っ直ぐ見つめる瞳には真剣な色が浮かんでいた。
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