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「ノゾミー、決まったー?」
「んー。決まると思う?」
「お前はなー、いっつも優柔不断だもんなー。」
「あんただっていつもそうじゃない。何も考えずポンと選んで、結果大失敗するくせに。」
「後悔してねぇから良いんだョ。」
「良いよね、あんたは親のことで悩むこともないんだし。」
「あぁそっか。わりぃ。」
私には父はいない。小学校の頃に、他の女を作って夜の街に消えたからだ。
母のもとに、気紛れでお金の入った封筒が届くが、連絡がつくわけじゃないらしい。
酒癖も悪く、母のことを怪我させる事もあった。
そんなんだったから、今更居場所を突き止める気もないけど。
女手ひとつで、私を高校に行かせたんだって、相当大変だったはず。
大学なんて別に...と思い続けてきたつもりだけど...。
「よくよく考えりゃ、スゲェ商売だよな。高校生1000人に一冊ずつテキスト買わせりゃ、それだけで150万とか200万、何冊も買い込む奴も居るだろうから、300万近くはいくんだろうな。」
カズマの一言が気になった私は、適当に一冊取って、裏のバーコードの辺りを見てみる。
”2400+税“
その数字を見つめているうちに、何か自分でもよくわかんない怒り が混み上がってくる。
「じゃ、 寄ってくトコあるし、俺ゃ先帰るわ、せいぜいよく考えろヨ。じゃぁな。」
カズマは、500円玉1枚を私の手のひらに押し込むと、軽くぽんっと私のアタマを叩いて廊下へ出ようとする。
「ってぇ!叩くんじゃねぇよバーカ。ってか、このお金なに!?」
「いつものパン屋のコロッケパンと、てめぇが喰いてーヤツ買ってこいや。ゲームすんだろ?」
「あ、そうだった。じゃぁねー、後でいくー。」
返事が聞こえたかわからないけど、どうせわかってるだろう。
テキストの見本の山に”2400円”のそれを戻すと、私もゆっくり教室を出た。
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