2.菓子パンとおばさま

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「おかえりー」 玄関の鍵をカバンから出そうとして、パンの袋を咥えて漁っていると、家の中から普段ならこの時間にはあまり無いはずの声がする。 その声にハッとして、パンの袋を落としかける。 「お母さん、今日はパート遅いはずじゃ。ただいま」 「うん、なんかね、店長さんが今日はもう大丈夫って」 「そうなんだ、ほらコレ、いつものだけど、買ってきたよ」 何気ない会話だけど、コレが出来る日はそう多くない。 掛け持ちでパートをしている母は、普段ならこの時間から家にいることは殆どないからだ。 朝はせめて一緒に食べようと言うことで、 コンソメスープにご飯とか、逆にお味噌汁とパンとか。 そんな”良くわかんない”組み合わせの朝食をとって、 一緒にそれぞれの場所へ出ている母子(わたしたち)だけど、夕飯を一緒に出来る機会は週に3回がいいトコだ。 「そうだと思って。通った時迷ったんだけど、パスしといて正解だったみたいね。」 「そうだったんだ。」 「今夜は時間あるし、作れそうだけど、何がいいかしら?」 「んー、そうね…。」 食卓に並んだ2つの紙袋をみながら、何がいいかなと考えてみる。 今日みたいな暖かい日なら、パスタとかあっさりしたものでも良いかな…。 …ん?今私なんて言った?紙袋…2つ? 「あ…カズマんとこ忘れてた…」 「あら。カズマくんのところ?」 「うん、コロッケパン頼まれてたんだっけ。」 「そうだったの。なら、帰ってきた時食べれるよう、作っておいておくから、いってらっしゃい」 せっかくのお母さんとの夕飯がお預けになってしまうのは惜しいけれど、カズマの言ってたコロッケパンが入ってることを確認して、カズマの家へ向かった。
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