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ぺこっと下げたヘルメットが可愛くて、私はうきうきしながらココアを2つ買った。
空いていた窓際の席で向かい、帽子とゴーグルと手袋を取って、私は席についた。
窓から見えるゲレンデを見ると、ゴーグルから解放された白い光が眩しくて、まともに目を開けられなかった。
「雪ってきれいだね」
そう言いながら視線を戻すと、彼はヘルメットやゴーグルを着けたままこっちを見て佇んでいた。
「どうしたの? あっ、私、なんか変?」
散々転がったから、どこか変に雪がついてるだろうか。
あ、絶対髪型傾いてる。
私が必死に髪を触っていると、彼は慌てたように手をふった。
「いえっ、全然、おかしくないです。すいません」
そう言って彼は、ヘルメットを脱ぎ、ゴーグルを外した。
頭まで覆っていたマスクも外し、ウエアも脱いで、彼は私の前に腰をおろした。
二時間ほど行動を共にしたが、素顔を見たのはこれが初めてだった。
ココアを啜り、息をつくと、彼はゲレンデを滑降する人をながめているようだった。
ウエアでわからなかったが、やはり彼はまだ線が細い。
マスクで乱れた黒い短髪は、やんちゃそうで可愛らしかった。
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