リフトに乗った君

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 しかし表情は大人びていて、切れ長な目で外のスノーボーダーたちを追い、少しずつ角張ってきたであろう顎筋には、男らしさも垣間見えた。  そして私は、彼の名前も聞いていないことに気づく。  恩人の名前も知らないなんて、一生の不覚。  声にしようとするが、どうも今更なようで、聞けなかった。  でも、彼の名前を知りたい。  しかし、人の名前を聞くにはまず自分からとも言う。  急に向こうの名前だけ聞くのは、失礼かも知れない。  だからと言って、急に私がここのタイミングで自己紹介を始めるのも、変な空気になりそうだし。  そもそも聞いてこないんだから、彼も私の名前なんか、別に知りたくないのかもしれない。  そんな人に名前を教えるのは嫌かも知れない。  今のご時世、個人情報とかにうるさくなってるし、今の子の方が、そういうところもしっかりしているかもしれない。 「やっぱり、雪山では温かいのは身に染みますね」  彼はにっこりと、ココアを飲んでいた。 「そ、そうね。疲れてるから甘くて美味しいし」 「甘いの好きですか?」 「超好き。よく友達とスイーツ食べ放題行く。ダイエットしてるのに」  彼は笑ってくれたが、けっきょくその後も名前を聞くタイミングを見つけることができず、ゲレンデにまい戻った。   ☆  ☆ 「でっか……」     
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