リフトに乗った君

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 それからまた少し下って行くと、雪でできた、とんでもない大きさのジャンプ台が現れた。  踏み切り位置の高さは10メートル弱。  他のコースにもいくつかジャンプ台や障害物みたいなものがあったが、このジャンプ台は比べ物にならない大きさだ。  それに立ち入り禁止になっていて、使っている人は誰もいない。  そんな雪山が、ゲレンデのど真ん中に聳えていた。 「ここで明日大会やるんです。それのジャンプ台です」  彼もその山を眺めながら教えてくれた。 「へぇー、こんな高さで飛ぶんだ。信じられない」 「僕も明日出るんです」 「えっ?」  私は豆鉄砲を食らったような顔をしていたと思う。 「出るの?」 「はい」 「飛ぶの?」 「はい」 「危なくないの?」 「たぶん、大丈夫です」  私はてっきり大人の大会だと思っていた。  まさか、こんな落ちたら間違いなく無事じゃいられない高さから子どもが飛ぶなんて、想像もしなかった。 「すっごいなぁ。やっぱりすごいね、見てみたかったな」 「いつ帰るんですか?」 「今日。5時にはもう帰っちゃうんだ」 「そうなんですか。残念です」  5時まで、あと1時間。  そうしたら、私は東京へ帰る。  私はジャンプを見上げる彼の横顔を見た。  あんなに帰りたかったのに、今は少し名残惜しい。     
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