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思えば、彼はきっとスノーボードが上手なのに、その姿を見ていない。
「明日大会なのに、よかったの? 私なんかに付き合って。練習しなくてよかったの?」
罪悪感に襲われた。
知らなかったとはいえ、やはり一緒に滑るのを断るべきだったんのではないだろうか。
大会の前日に、こんなことしてていいわけがない。
「前日だからいいんですよ。前日は流しだから、全然問題ないです」
「でも……」
「ごめんなさい。僕の方こそ変なこと言っちゃって。ほら、もうすぐゴールですよ。行きましょう」
麓の建物が、眼下に見える。
ちょうどそこがツアーの集合場所だった。
この時間ならそろそろみんな帰ってくるだろう。
そうしたら彼ともお別れだ。
ゴールしたくないな。
なるべく長く、彼と滑っていたい。
でも滑れるようになってきた私は、もう彼に手伝ってもらわなくても立ち上がれるし、近くにいてもらわなくてもちゃんと滑れるようになった。
手を繋いで、リフトから降りたあのときが懐かしい。
私は前を行く彼を、ずっと眺めていた。
☆ ☆
「ゆき! よかった、探したよう!」
ゲレンデを下りきってすぐ、私は友人たちと再会した。
「大丈夫だった? ごめんね。連絡したんだけど返ってこないし、どうしたらいいかわかんなくてさ」
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