リフトに乗った君

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「ああ、寒いと電源落ちちゃうんですよね。カイロ貼っとくといいですよ」 「そうなんですか。知らなかった」  まだ声変わりが終わっていない声で、彼は気さくに話しかけてくれる。 「お姉さんはここ初めてですか?」 「はい、ていうか、そもそもスノーボードも初めてで、まだ全然滑れないし」 「そうなんですね。僕地元なんで、ここよく来るんです」 「すごい! じゃあ上手なんですね」 「そんなことないです。まだまだですよ」  スノーボードをする男子は、チャラい人が多いイメージだった。  派手なウェアを来て、昨日から私たちも何回か声をかけられた。  でも彼は謙虚で、格好も真っ黒な上にカーキのパンツ、ブーツや板も濃い青で、とても落ち着いた雰囲気だった。  レンタルのキャピキャピしたウェアを着てる私とは大違いだ。  彼と話していると、リフトが終点に近づいた。  私はぐっと緊張する。  乗るのも苦手だが、降りるのはもっと苦手だ。  昨日から何度も乗っているが、いつもリフトから離れるとき、転けてリフトを止めてしまう。  友人たちといるときはまだいいが、ひとりでこんなところで転けるなんて恥ずかしすぎる。  でもひとりできれいに降りられる気もしない。  私は恥さらしを覚悟した。     
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