リフトに乗った君

4/15
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
 セーフティバーを上げ、緊張の面持ちで構える。 「降りるのまだ苦手ですか?」  彼は平静だ。  しかし私はそれどころじゃない。  私が「はい」とだけ言うと、なぜか目の前に手を差し出された。 「こっちにちょっとだけ体重かけて、あとはただ普通に立っててください」 「え、危ないですよ」  いつも私ひとりが転がるので、1回友人に掴まって降りてみたのだが、結局全員まとめて転倒するという大事故になったので、それからはひとりで転がり、なるべく回りに迷惑をかけないという戦法をとっていた。 「大丈夫です。力まないで、ただ板の上に立っててください」  私は彼に手をとられ、私たちのいるリフトは速度を下げ、格納庫に入っていった。  男の子に掴まり立ち上がると、そのまままっすぐ滑っていき、何事もなく止まった。 「すごい。私、初めて降りられた。ありがとう」 「いえ」  背丈は私と変わらない。  でも私が強めに寄りかかっても微動だしなかった彼に、やっぱり男の子なんだなと感じた。  私はボードを足につけたままよちよちとリフトから離れ、辺りを見回した。  やはり、友人たちはいなかった。 「友達いませんか?」 「はい……」  これで本当に手立てがなくなった。  私が項垂れていると、彼は言った。     
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!