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セーフティバーを上げ、緊張の面持ちで構える。
「降りるのまだ苦手ですか?」
彼は平静だ。
しかし私はそれどころじゃない。
私が「はい」とだけ言うと、なぜか目の前に手を差し出された。
「こっちにちょっとだけ体重かけて、あとはただ普通に立っててください」
「え、危ないですよ」
いつも私ひとりが転がるので、1回友人に掴まって降りてみたのだが、結局全員まとめて転倒するという大事故になったので、それからはひとりで転がり、なるべく回りに迷惑をかけないという戦法をとっていた。
「大丈夫です。力まないで、ただ板の上に立っててください」
私は彼に手をとられ、私たちのいるリフトは速度を下げ、格納庫に入っていった。
男の子に掴まり立ち上がると、そのまままっすぐ滑っていき、何事もなく止まった。
「すごい。私、初めて降りられた。ありがとう」
「いえ」
背丈は私と変わらない。
でも私が強めに寄りかかっても微動だしなかった彼に、やっぱり男の子なんだなと感じた。
私はボードを足につけたままよちよちとリフトから離れ、辺りを見回した。
やはり、友人たちはいなかった。
「友達いませんか?」
「はい……」
これで本当に手立てがなくなった。
私が項垂れていると、彼は言った。
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