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「じゃあ、下りましょうか。下に行けばもしかしたら友達さんもいるかもしれないし、僕充電器あるんで、貸しますよ」
「いやっ、悪いですよ。せっかく滑りに来てるのに、私下手だから、すごい遅いですよ」
そこまでされるのは恐縮だ。
しかし彼は、手首に引っ掛けていた手袋をはめながら言った。
「そんなの、僕はいつでも来れるし。それに雪山は、こういう出会いが売りですから」
表情は見えないが、たぶん笑ってくれていると思う。
まだ若そうなのに、人に気を使わせないような話し方をしてくれる。
そんな彼の振るまいに感動してしまった。
「そうですか? じゃあ、お言葉に甘えて、ついていってもいいですか?」
「もちろん。一緒に滑りましょう」
私はもう分けない気持ちと、心強さを感じながら、
足を固定した。
彼はそれすらも遅い私を待ってくれて、先導しようとゆっくりと滑り出した。
ただ私は、それすらできない。
板を縦にするのが怖くて、私は昨日からずっと、板を横にしてずりずりと下りていく木の葉落としという滑り方しかできないのだ。
しかしそれはある程度傾斜がないと難しくて、ここは幸か不幸かほぼ平ら。
進み出すことすらできなかった。
しかし彼は、そんな私を知っていたかのようにすぐ止まってくれた。
「板縦にできないですか?」
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