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それが本当かどうかはわからないが、何度も転けるうちに痛くない転け方がわかってきて、 楽な立ち上がり方もわかってきた。
そうなると、もう転けるのが怖くなくなった。
彼に助けてもらわなくても立てるようになって、ちょっとずつ滑っていられる時間が増えた。
「すごいすごい! 滑れてます!」
終いにはなんとなくターンの形にもなってきて、スノーボードをやってる風になった。
最後はスピードが出すぎて止まれずすっ転んでしまったが、それは自覚できるぐらいの上達ぶりだった。
雪が冷たい。
ネックウォーマーとゴーグルの間から雪が入ったが、気にならなかった。
ゴーグル越しに見る空はレンズのせいで少し暗いけど、雲ひとつない快晴だった。
近くで、ざざっと雪を削る音がしたと思ったら、その視界にふわっと雪が舞いこんでくる。
それらは私の顔に降ってきて、視界が雪に埋もれた。
「ちょっと! 雪かかったでしょ!」
体を起こすと、隣で彼が笑いながら「すいません」と謝っていた。
さっきまでしっかりした少年だったのに、ふと見せた年相応ないたずらに、喉の奥が熱くなった。
年下で、しかも子どもなのに、雪の上で寝転ぶ彼に触れてみたくなった。
それと同時に、それはとても恐れ多くて、できなかった。
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