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彼は、スノーボード初心者で迷子になっているどうしようもないおばさんを、しかたなく助けてくれているだけ。
こんな親切ないい子に、私は何を考えているのか。
私は振り払うようにすばやく立ち上がり、滑り出した。
彼も私と並走したり、前を走ったりして、またスノーボードのレッスンが始まった。
しばらく下りてくると、レストランが出てきた。
「一旦休憩しませんか?」
彼にそう言われ、私たちはそのレストランに入った。
200人は入りそうなレストランだったが、昼時を大分過ぎたそこは空いていた。
お互い昼食は取っていたので、温かいものでも飲もうかということになった。
「何が飲みたい?」
私がそう聞くと彼は「ココアにしようかな」と呟いた。
「わかった。買ってくるから待ってて」
私がそう言うと、彼は「えっ?」と鳩が豆鉄砲を食らったような顔を、したような気がした。
「いいですよ。自分で買います」
「これぐらいさせて? 私ばっかりしてもらってちゃ、申し訳ないから」
「僕大したことしてないですよ」
「これも大したことないから、大したことない同士で、ちょうどいいでしょ?」
彼は居心地が悪そうに、でも頷いてくれた。
「すいません。ありがとうごさいます。ごちそうさまです」
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