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「この国では、長く大切にされた『モノ』には魂が宿ると言われています。僕たちにはちょっと魂が宿りすぎて、もうあちこち文章が怪しくなってますからね。そろそろ『無くなる』ほうがあの人のためなんですよ」
翁が震える肩の上の首をこくりと頷かせて、それに応じる。そして黙って闇へと消えた。
「あばよ」
「じゃあな」
「ごきげんよう」
「楽しかったぞ」
「それじゃあ」
「お元気で」
「忘れないぜ」
登場人物たちが次々と翁に続いて闇に去る。
最後に残った探偵は、闇の向こうを透かし見るように目を眇めてしばしその場にとどまると言った。
「さよなら」
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