あかね雲

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これ、お兄ちゃんから。 何?本?・・・ 博が聡子に差し出したのはタイトルがあかね雲の文庫本。 かなり読み込まれているようで、本の端が所々ささくれている。 あげるって。 ありがとう。 博の兄に聡子は思いを寄せていた。告白したのが三日前の兄の卒業式のこと。 中学校の校門で最後の下校を待ち構えて初めて告白した。 写真一緒に撮ってください。 肩に手をかけようね。 聡子の友達がカメラを構え、手がかけられた肩が緊張していた。 もう三十年も前の話。文庫本はどこにしまい込んだかわからなくなってしまったが、あかね雲のタイトルは今でも思い出す。当時はあかね雲がどのような雲なのかよくわからないでいた。今はインターネットで写真付きで簡単に調べることができる。 あかね雲。夕焼けや朝焼けにより茜色をした雲のこと。
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