第一話 リアンと王様と魔導師と

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第一話 リアンと王様と魔導師と

1  その日は、よく晴れていた。  暑すぎず、心地よい風が吹き、時折流れる雲が美味しそうなパンの形になり空を漂う。  そんな空の下、鬱葱と生い茂る森の中にぽつんとある一軒家。レンガ造りのその家にある出窓からでは、少女が窓辺で頬杖をつき、雲の形がゆっくりと変化する様を眺めていた。灰色の瞳が、見るからに暇な様子を物語っていた。 「退屈だわねー」  村から離れた森の中にある古い一軒家と広い庭。一人で住むには広すぎ、まともな手入れが出来ていない。  おかげで庭は、草木が生え放題荒れ放題だ。  だが、(あるじ)たる少女──リアン本人は、それを気にしている様子はない。  風が舞い、くすんだ茶色の癖毛が退屈そうにひらひらと揺れる。  やがて雲に見飽きたリアンは、立ち上がり、大きく伸びをした。 「こんなに退屈になるんなら、キリアを使いに出すんじゃなかったなー」  ──と。  小さな男の子が、開いたままになっている門扉(もんぴ)(錆びていて閉まらない)から小走りに入って来た。森の藪を突っ切ってきたのか、衣服は葉っぱだらけだ。 「おや? こんにちは、ウル」     
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