第二話 リアンと王様と魔導師再び

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 当のリアンは、先日木っ端微塵に砕いた王宮の修繕費についての書簡を、突きつけられては突き返していた。あれは宮廷付きの魔導師がやった事で、自分ではないと言い張る。それを持ち帰った使者は、王であるルーデシアスに伝えようとするのだが、件の魔導師で報告が止まる。結果、再びリアンの元へ向かう事になる。  彼と書簡は、盛大な無限ループに陥っていた。 「あなたも大変ねぇ」  リアンは窓枠にもたれかかり、のんびりとねぎらいの声をかけるが、それならこの書面を受け取って欲しい。使者は切にそう願った。使者は、リアンが魔女である事くらいしか情報を持っていない。さらに彼は平民出で、王宮に従事する人間だ。魔法使い同士のやりとりなんて、とてもじゃないが口を挟めない。  ただ、これだけは思うのだ。    ──どっちでもいいから、認めてくれないかな。    責任の所在を。  使者は閉ざされたドアを前に、大きくため息をついた。 3 「どうしたんだね、リアン。こんなに朝早く」  村長が驚くのも無理はない。余程のことがない限り、週一の読み書き教室を除いて、滅多に自分の家から出ないリアンが、自ら訪ねて来たからだ。  そんな時のリアンは大抵は不機嫌だ。多分に漏れず今日もそうだった。  リアンはずかずかと村長の家に入り、勧められてもいない椅子にどっかと座り、例の書簡をテーブルに投げ出し、開口一番挨拶抜きでこう言った。 「あの大した力もないクソ魔導師からの使い、どうにかしてよ」  村長は絶句した。宮廷付き魔導師を『クソ魔導師』呼ばわりしたからだ。     
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